■創成期

|『最初、世界はただ一握の砂であった』
全知神<キグナディア>が砂を撒き、その上に降り立ちこの世界<エルヴァニア>は生まれた。
次にキグナディアは己の右腕から太陽神<セルディア>を、次いで左腕から貴月神<リヒディア>を作った。 キグナディアと、その肉体から生まれたセルディア(男神:朝の象徴で光の化身)、リヒディア(女神:夜の象徴で闇の化身)の三人を三大神と呼ぶ。


|命の芽生え
命を生みだす力を持つセルディアと、命を奪う力を持つリヒディア。朝にはセルディアが百の命を生み、夜にはその半分をリヒディアが奪う。
こうして様々な命が芽生え、淘汰され、エルヴァニアは次第に豊かになっていった。
二人はまず鉱石を、次に植物を、最後に動物を生んだ。

男神と女神が世界を創造している間に、キグナディアは七つの種を地面に埋めた。
するとたちまち芽が出て、やがて咲いた花から七人の美しいエルフが生まれた。これが<エルフの七賢人>である。名をエレンディウスアレフリント、イェーツランド、ヨークーク、オラース、リューシアン、セシカオルバという。
このうち長兄のエレンディウス、末弟のセシカオルバにはあるべき性の境界がなく、髪の色も三大神と同じ、眩い白銀であった(他の五人は金髪)。
また、性別を持つ五人のうち、女はアレフリントただ一人のみであったという。


|エルフはとっても怠け者
次第に数を増やしていくエルフであったが、根が怠慢なため、エルヴァニアの管理をあまり真面目にしようとしなかった。
そのためキグナディアは自ら槌を振るい、巨岩を削って三人のベグルーシを作った。
彼らは謹直な性格で、体も大きく、どんな重い物でも持って動かす力があったが、姿形が醜悪で、また知能もそれほど高くなかったためエルフに嫌われ、地下深くに追いやられてしまう。
以降ベグルーシは岩窟を住処と定め、薄暗い地底で生活を送るようになるが、いかに温厚なベグルーシといえどもこの仕打ちは許せなかったらしく、その子孫であるドワーフがエルフを毛嫌いする理由はここからきている。

困ったキグナディアは十体の動物を集め、男女五人ずつのアーリオを作った。
これはやや小柄ではあるもののエルフとよく似た姿で、また知能も非常に高く、器用であったため、エルフもこれを気に入った。

<歌と魔法のエルフ>、<力と誠実のベグルーシ>、<知恵と技のアーリオ>三種のヒトの誕生をもって創成期は終わりを告げる。

 

■萌芽期


|国、そして文明の誕生
それぞれの種族が数を増やし、次第に国家を形成し始める。
エルフのうち、七賢人は三大神と共に島国ローハーで暮らし、その他のエルフはエレンの森(ユリシア北西)を住居とした。
五組の夫婦となったアーリオは、それぞれ夫婦ごとに国家を作った。すなわちユリシアエヴァノン、 レジア、バレリア、ローハーである。これが後の六大国。
(シリスはもともとユリシア領内の都で、後に独立して国家となったもの。そのためユリシアとは仲が悪い)

ベグルーシは現在のバレリアの辺りに集まったが、生殖能力が低く、種族内であまり数を増やせなかったためアーリオとも積極的に交わった。 こうして生まれたベグルーシとアーリオの混血種がドワーフである。

エルフやベグルーシが種族同士で争うことはなかったが、アーリオは五組の夫婦を筆頭にして激しく争った。しかしこの競争が文明の発達を促し、アーリオは種族としての力を増すこととなる。


|魔剣JUGMAと呪われたヒト、ヴェーダ
六大国の一レジアはこの頃から武具の製造が盛んであったが、弟に王位を奪われた先代のレジア王により、一振りの恐るべき魔剣が生み出されてしまった。
<JUGMA>と名付けられた魔剣(※1)は、その厄災を恐れたレジア国民の手により封印されるが、運悪くこれを見つけてしまった女エルフにとり憑き、ついには魂を虜としてしまう。

憎しみに心を奪われた、この哀れな女エルフを始祖として誕生したのがヴェーダである。
ヴェーダは<最後のヒト>とも呼ばれ、エルフと同等の強大な力と美しい姿を持つが、その原動力はエルフの「愛」とは対極の感情である「憎」。

※1:<JUGMA>の正しい読みは解明されていないが、便宜上<ユア>と呼ばれている。


|エルムトとアレフリント
この頃、七賢人の紅一点であったアレフリントが、アーリオの青年エルムトに一目惚れするという事件が起きた。
絶世の美女であるアレフリントを見てエルムトが恋に落ちないはずがなく、二人はすぐに心を通わせ合う。
しかし、エレンディウスという(性別はないものの)唯一絶対の夫をもつアレフリントに、エルムトと結ばれる道はない。 悲しみに暮れるアレフリントだが、ある時ついに、エルムトの誘いに乗ってローハーを逃げ出し、手に手を取って北へと落ちのびて行った。

これを知ったエレンディウスは激怒し、すぐさま二人を見つけだすと、まずアレフリントを歪な巨木に変えてしまった。
次にエルムトを醜い獣の姿に変え、更にはその姿のまま永遠の生をすごさねばならないという重い責を課す。

この事件はすぐに三大神の知るところとなり、怒ったキグナディアは七賢人から魔力を奪い取ってしまう。
これにより七賢人のみが使えたとされる魔術は滅びるが、六人(アレフリントを除く)から取り上げた魔力がエルヴァニア全土に飛び散り、 これがやがて精霊となって魔法が誕生することとなる。
つまり、魔法の誕生は魔術の滅亡(七賢人の衰退)をもってしなければなかった、ということになる。

これら一連の流れを受けて、それまでは愛ばかりを歌っていたエルフに憎悪の心が芽生え、逆に、憎悪に駆られて争ってばかりいたアーリオに愛の感情が芽生えた。
ためにエルフは品位を少し下げ、アーリオは上げて、結果として二種族間にあった階級の差が縮まることとなった。

母なる聖女とアーリオの青年との悲恋の物語は、それまで支配層にいたエルフの転落をもって終結する。


|物語は史実の時代へ
世界の自立を確信した三大神は、過度な干渉を避けるため、エルヴァニアとは別に<聖地メオテラ>を作り、そこに移り住むことを決める。
いよいよ移住という折、二つの世界を繋ぐ扉にセルディアとリヒディアの衣が挟まれてしまい、その一部がエルヴァニアに留まった。 この切れ端が光の精霊ユフィロスレジアと闇の精霊ヴァネッサになるのである。
光と闇の<超越種>が、他の精霊と違ってそれぞれ一個体ずつしか存在しないのは、こういった成り立ちのためだといわれている。

こうして神々とヒトはそれぞれ住むべき世界に落ち着き、二つの空間を行き来するものとして精霊が生まれたこの時をもって萌芽期は終了し、 続く開墾期へと繋がっていく。
また、アーリオが自らを<世に遍くある存在=人間>であると公言し、率先して歴史を纏め始めたのもこの頃。

今日では、アーリオ(<第二のヒト>という意味で、多少の蔑視が入っている。正しく数えるならば<第三>となるはずであるが、ベグルーシは数から外されているらしい)と呼ぶのはエルフぐらいのもので、<人間>という呼び名が公式とされている。
それに倣い、このページでも以下アーリオのことは人間と記すこととする。

 

■開墾期


|エルフの分裂
この頃のエルヴァニアは、すでに今日と変わらないまでに至っており、六つの国家はそれぞれ独自の文化文明を育てようと励みをみせていた。

一方のエルフは、寒いばかりで物資が乏しいユリシアに見切りをつけ、南の国エヴァノンに移住することを決める。
七賢人亡き後にエルフの王となったエルヴェ・ローズクランツを筆頭に、多くのエルフがこの南下に従ったが、一部のエルフは北の大地に留まった。この時残った側を北エルフ、エルヴェ王率いる南下組を南エルフと呼ぶ(※2)。

南エルフは保守的な性格で、人間とは決して交わらず、人里離れた山奥に都を構えた。
対する北エルフは革新派で、ユリシア人とも積極的に交わり、種族間で結婚することもそう珍しくはなかった。

こうなった理由のひとつに髪の色が挙げられる。


|種族とその髪の色
七賢人に見られるように、純潔のエルフの髪は金か、それに近い小麦色をしている(エレンディウス、セシカオルバの銀髪は例外)
それに対して地底に追いやられたベグルーシは黒髪。人間は黒、ブルネット、赤、茶色と、雑種多用な髪色をしているが明るい色の方が少なかった。
自負心の強いエルフは、この髪色の違いこそが種別の優劣を示すものであるとし、明るく美しい髪は祖先から賜った崇高なものと考え、自らの誇りとした(※3)。

それと同時に黒髪蔑視のきらいが生まれたのだが、エヴァノンの人間に黒髪が多いのに対し、ユリシア人の髪は比較的明るい色をしていた。そのため北エルフは、比較的親しみをもって人間と交わることができたのであろう。
また、エルフと関わることによって、ユリシア人にも黒髪蔑視の傾向が芽生えたとされる。

※2: ユリシアに留まった北エルフだが、エルヴェ王への忠誠心に揺るぎはなかった(むしろエルフ族のいっそうの繁栄を思って北に残ったといえる)。しかし南エルフは「北は裏切り者である」とし、分裂後はこれと一切の関わりを絶ってしまう。
※3: 実際に、髪の色が明るいほど<アゾート>の質が高いとされている。しかし、稀に生まれる<最も尊い色(=銀色)>の髪のエルフは、概して早逝だという。
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